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レビュー:「ザ・シェイプ・オブ・ペイン」サマーホール、エディンバラ・フェスティバル ✭✭✭✭
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markludmon
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痛みのかたち
サマーホール(エディンバラ・フリンジ)
★★★★☆
明確な原因が見当たらない慢性疼痛の体験を、どう伝えればいいのだろう? 言葉だけでは足りない。けれど『痛みのかたち』で、作・共同クリエイションのレイチェル・バッグショーとクリス・ソープは、描写や比喩(直喩・隠喩)にとどまらず、音・光・色彩を織り交ぜた手法で、それを伝えようと試みる。
一人芝居の土台にあるのは、レイチェル自身が抱えてきた複合性局所疼痛症候群(CRPS)の経験だ。CRPSは理解が進んでいない症状で、はっきりした直接原因がないにもかかわらず、強い痛みが持続することがある。彼女は、CRPSを「普通の痛み」と同じように簡単に対処できると思い込む医師や周囲の心ない(そして的外れな)言葉をウィットで炙り出しつつ、クッションが詰まったフットボールのようなものが体から飛び出していく――といった抽象的なイメージを呼び起こしながら、この症状に対する複雑な感情を説明しようとする。
本作はラブストーリーでもある。レイチェルがある男性と関係を築こうとする過程が語られ、彼は彼女の症状について「どう話すべきか」だけでなく「いつ話さないほうがいいか」も直感的にわかっている。だが結局のところ、クッション入りのフットボールの比喩と同じように、主観的で輪郭の定まらない体験を、完全に言語化して伝えるのはおそらく不可能なのだ、ということが立ち上がってくる。
それでも、演出を務めるレイチェル自身の手腕によって、『痛みのかたち』の強みは、言葉では届かない領域を伝えるための感覚への総攻撃にある。ちらつく照明、方向感覚を揺さぶる映像効果、耳に残るブーンというノイズや脈打つ低音――それらがレイチェルの体験を観客に手渡そうとする。舞台奥には、細かなメッシュのパネル8枚が馬蹄形に配置され(デザイン:マデリン・ガーリング)、そこへ色と形が投影される。映像・照明はジョシュア・ファロ、音楽(サウンド)はメラニー・ウィルソンが手がけ、没入感のある空間をつくり上げている。
何よりも、この作品の力の源は、レイチェル役を演じるハンナ・マクペイクの圧倒的なパフォーマンスだ。落ち着いた飄々とした語り口から、激しい表現力で胸を打つ瞬間まで、振れ幅の大きい演技で観客を引き込む。観終わってもレイチェルの痛みの「かたち」を掴めるのはかすかな程度かもしれない。だが、それが彼女の人生をどれほど衰弱させているかは、忘れがたい感触として残る。
2017年8月26日まで上演
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