演劇ニュース
レビュー:『私は何をしているのか?』、ユニオン・シアター ✭✭✭✭
掲載日
2015年10月21日
作成者
マシュー・ラン
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『What Am I Doing?: Tales From A Worrying Actor(僕は何をしているんだ?:心配性の役者が語る物語)』 ユニオン・シアター 2015年10月11日
★★★★☆
表題どおりの“心配性の役者”ことグレゴリー・ヘイゼルは、高いスツールに腰かけ、落ち着かないエネルギーを全身にまとっています。本人もきっちり指摘するように、“心配”をテーマにショーを作ること自体が、じつに神経をすり減らす試み。それでも彼は、ここから続く2時間の自虐たっぷりの爆笑が、日銭で食べていく俳優たちの苦労を映すだけではなく、不安こそが人間の根っこにある理由を照らし出すのだと約束します。
ただ、What Am I Doing? がその約束を完全に果たしたかというと、正直なところ疑問は残りました。それでもヘイゼルの肩の力の抜けたカリスマ性と、終始楽しませてくれる逸話の数々のおかげで、満足度の高い一人芝居になっています。歌とモノローグの連作として構成された本作は、彼が自分自身を軽やかに笑い飛ばす力によって生き生きと立ち上がります。魅力的でありつつ、ときに滑稽でもある“舞台のある暮らし”をめぐる体験談が軸。学校集会で自作曲を歌いながら勢い余って「みんな一緒に!」と叫んでしまうといううぬぼれた判断から、将来の舞台像の話へ――「2015年はドラァグの仕事のオファーのほうが、ドラァグじゃない仕事より多かったんだ」――ヘイゼルは終始チャーミングな軽妙さで、自分の人生を探っていきます。
そこに拍車をかけるのが、このショーの愛すべき“未完成感”。少なくとも一度、次に何をするか確認するために進行表を見返し――「自分で書いたのにね」――さらには舞台上の不安をたびたび打ち明けます。「次の曲、なんだか嫌な予感がするんだよね」。一方で、構成のゆるさは音楽の効き方にも影響していました。ヘイゼルの歌は手堅いものの、圧倒するほどではありません。ただ、誠実な語り口には大きな可能性が感じられます。ピアノのシモナ・バッドの非の打ちどころのない演奏も相まって、物語パートと同じくらい、率直で気持ちのいい音楽になれていたはずです。
しかし、扱う題材が普遍的――恋愛が頻出テーマ――であることが、かえって感情の引力を弱めていました。文脈が提示されないためです。「デートに行っても、君は時計ばかり見る」といった一節にはヘイゼル本人の経験をもっと知りたくなりますが、そうしたテーマは曲が終わるとたいてい置き去りにされます。さらに歌詞は「overdose of love(愛の過剰摂取)」「I just might make it(きっとやれるかも)」のような決まり文句に頼りすぎていて、気持ちがどこか他人行儀に聞こえてしまいました。終盤の盛り上げ役は、観客参加をたっぷり盛り込んだ「I Guess That’s Why They Call It the Blues」の熱演。これが抜群にうまくいくのは、『The Voice』のオーディションを受けたという前段のエピソードと結びついていたからです。これを「後悔」をめぐる可笑しくも胸を打つナンバーと並べて考えると、より引き込まれる音楽的な物語を作れる余地が、このショーには十分あったのだとわかります。
特筆したいのが「worry pot(心配ごとポット)」です。休憩時間に観客が“心配ごと”を書いて入れ、後半冒頭でヘイゼルが読み上げる仕掛けで、「自分の心配が、面白くなかったらどうしよう」「闇の帝王の到来と、深淵からもたらされる魂が削られるような恐怖が心配」といった珠玉の投稿が飛び出します。この気まぐれで愉快な導入はヘイゼルに即興のチャンスを大量に与え、彼の間の取り方の見事さが際立ちました。私がこれまで観た一人芝居の中でも、驚くほどわけがわからないくらい面白い瞬間のひとつです。
What Am I Doing?: Tales From A Worrying Actor は、語り部としてのグレゴリー・ヘイゼルの才能を存分に示した、印象に残る一人芝居でした。歌はしばしばモノローグほどの意味の濃さを感じにくいものの、光るナンバーはいくつかあり、より没入感のある物語へ発展しうる手応えも見せています。今後の作品もぜひ追いかけたいと思います。
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